古民家と里山を思う存分楽しめる 美咲町の農家民宿「シャンブル・ドットE」

美咲町の里山にある農家民宿「シャンブル・ドットE」は、ご夫婦二人三脚で5年かけて古民家を改修し、2021年にオープンした農家民宿です。薪割りとやぎたちへの餌やりを体験したら、暖炉の火に癒され心も体もゆったり。朝は生みたて卵と里山の恵みを感じる美味しい手料理。里山暮らしを間近で見て体験して、まさに「暮らすように旅する」という時間が過ごせました。実際に宿泊し、レポートします。
掲載日:2023年03月06日
  • ライター:m.k
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農家民宿「シャンブル・ドットE」ってどんなところ?

美咲町東垪和。林の中、車一台が通れるほどの細い道をしばらく進むと、突然風景が開け、その奥には古民家が。
すぐそこ、昔は棚田だったという土地ではやぎたちが草を食み、鳥の鳴き声が聞こえます。
シャンブル・ドット(Chambre d’hote)とはフランスの民泊スタイルのことで、オーナーの暮らしに密着し、その土地ならではの体験ができるのだとか。シャンブル・ドットEのオーナーである八木さん夫妻は、オーストラリアで障害を持つ方が開いたバリアフリーの宿の運営を約2年手伝い、フランスを旅したとき、酪農をしながら自然と共に暮らすオーナー家族のもとで住み込みで働いた経験などを通じて、日本で農家民宿を開きたいと、シャンブル・ドットEをオープンしました。
美咲町で田んぼと畑を耕し、やぎや鶏を飼い、里山とともに暮らしています。
もともと棚田だった、沢がある開けた土地に、やぎたちが歩く牧草地のイメージがわき、古民家の状態も良かったためこの地で暮らすことに決めました。
5年かけて改修した建物は、車いすの方でも利用しやすいバリアフリーとなっています。建物の中は、昔の日本ならではの暮らしが見えるとともに、自然と一体であることを感じる工夫がいっぱい。
リビングダイニングスペースには暖炉が。夏は隣の和室との間の仕切りを開き、風が通るそうです。
隣の和室には、大きなテレビが。ゆったりと映画を見ることもできます。
外は開放的な広いウッドデッキになっていて、ここでヨガを楽しむ人もいるそう。
ここは私がこの日、宿泊した寝室です。真っ白の漆喰と無垢の木が使われ、空気と一緒に自分まで浄化されそう。外には棚田の風景が広がります。朝の目覚めが最高に気持ちいいですよ。
寝室の隣には書斎のような部屋が。柄の入ったレトロなガラス越しには、棚田の風景。喧騒を忘れ、くつろぐことができます。
バリアフリーの広いトイレには大きな窓。この地域によく転がっているという黒くて大きな石を見ることができ、神秘的です。人間もまた自然の一部だと体感できる空間です。
広いお風呂も八木さん夫妻の手作り。カラフルで異国情緒がありますが、日本の木枠の窓と不思議とマッチしていて素敵です。快適に過ごすことができました。
日本の伝統的な土壁を観察できる、不思議な脱衣所。日本の古き良き生活様式を、新しい視点でまるごと楽しめる宿です。

季節の里山体験 薪割り&やぎたちへの餌やり

里山を散策したり、やぎたちを観察したり。それだけでも楽しいシャンブル・ドットEですが、ほかにも季節に合わせて様々な体験ができます。例えば、春は山菜摘みや筍ほり、田植え。夏には野菜の収穫体験。秋には稲刈り、芋ほり、昨年は地域の方と一緒に育てているピオーネの収穫体験もできたそう。また、種から育てた藍を使う藍染体験、どんどん生えてくる竹を使った箸づくり体験など、里山だからこその様々な体験ができます。
雪が降る2月に訪れた私は、薪割りとやぎたちへの餌やりを体験しました。まずは初めての薪割りです。斧を持つと、想像以上の重さ!「足は縦でなくて横に開いて、斧は切り株を目がけるイメージで振り下ろしてみてくださいね」とレクチャーを受けました。
足をふんばり、腕を振り上げ、草を食むやぎたちを眼下に望みながら、エイヤー!
一回ではやはり、割れませんでした。でも、手ごたえはあり! その後数回、「エイヤー!」と斧を振り下ろし、ついに、パッカーンと割ることができました。気分爽快! 
続いてはやぎたちへのえさやり体験。前日まで暖かい日が続いたため、新芽が出てきており、遠くで美味しい自然の草を食んでいたやぎたちですが、米ぬかと野菜を持って八木さん夫妻が呼びかけると、5頭が並んで上がって来てくれました。かわいい!
生えている草のほか、キャベツやにんじんも食べるそうです。「ちょうだい、ちょうだい」と言わんばかり、手から上手に食べてくれました。
えさやりをすると、間近でやぎの表情を見ることができて癒されました。
もう食べるものをもらえないとわかると、また去って行きました。かわいいですね。
 

生みたて卵をとりに行き、自然の恵みを味わう朝食

「朝ごはんの卵を取りに行くこともできますよ」と言っていただき、即「行きたいです!」と返答。翌朝、静かな朝の空気の中、鶏たちがいる小屋へ連れて行っていただきました。
びっくり、4種類もの鶏たちが。それぞれ、大きさも色も違う卵を産むのです。不思議ですね。
転がっている卵を拝借。中には、卵をあたためている鶏も。「孵(かえ)るかもしれんから」ということで、その卵はとらずに去りました。ふだんの食事でも、生命をいただいているんだなと実感。
朝食タイムは、朝から品数たっぷり。この日は自家製のお米を土鍋で炊いたごはん、お手製の麦みそを使ったお味噌汁、ごぼうのきんぴら、大根と人参のなます、地域の方が育てた大豆の煮豆、手作りの奈良漬けなど。朝から幸せな気持ちです。
先ほど取りに行った卵も並んでいます。烏骨鶏が薄茶色、ボリスブラウンが茶色、ホワイトレグホンが白色、アローカナが青の卵を産みます。
土鍋で炊いたごはんに、新鮮でぷくっとした有精卵をといてかけて、なんと贅沢な朝ごはんでしょう。濃厚な卵の味に感動です。

四季ごとに訪れたい「シャンブル・ドットE」

薪のくべ方を教えてもらったり、朝、聞こえてくる鳥や獣の声に感動したり。まさに「暮らすように旅する」という時間が過ごせました。現代的な暮らしをしている私にとって、自然あふれる里山の中での日本の昔ながらの暮らしは、覗き見るだけでも新しい感覚になれます。
里山で思いきり遊びたいファミリー、お友達家族同士で遊びに来る人、ひとりでぼーっとリラックスしに来る人など。自然の中でいいアイデアを出したいという人は、職場仲間でのワーケーションもおすすめです。寝室・和室に最大8人くらいが宿泊でき、夜の食事の提供、もしくは外での自炊・バーベキューも可能です。今回、宿泊客は私ひとりでしたが、宿で出会った見知らぬ人との会話も楽しそう。
 春には緑があふれ、また違った里山の風景を見ることができるでしょう。日本の四季折々の自然の豊かさを感じに、シャンブル・ドットEにぜひ泊まってみてくださいね。
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