桃太郎伝説の舞台&人気ハイキングコース!「鬼ノ城」の全てをまわってご案内(総社市)

岡山県総社市にある「鬼ノ城」は、日本100名城にも選ばれている古代山城です。城から望む絶景と古代ロマンを求めて多くの歴史ファン、観光客、ハイカーが訪れます。でもハイキングで訪れた人以外、ほとんどの方は復元されている西門まで来て帰途につきます。しかしここから先、更に続くエリアにこそ魅力がいっぱい!今回は桃太郎伝説の主人公でもある桃太郎こと吉備津彦くんと、ともちピンク殿と共にハイキンクコースとしても人気の「鬼ノ城」を全て回ってご案内します。
掲載日:2025年03月12日
  • ライター:曲輪衆◎たけ
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鬼ノ城ってどんなお城?(立地)

標高400~600メートルの吉備高原の南縁、総社平野を一望できる絶景の地に築かれた古代の山城です。約30ヘクタールの広大な敷地を持ち、古代の山城としては非常に大規模なものです。

鬼ノ城ってどんなお城?(構造)

白があるのはすり鉢を伏せたような形の山で、斜面は急峻ですが頂部は平坦です。この山のなだらかな斜面から急斜面へと変わる8〜9合目あたり付近の要所に高石垣を交えつつ、強固な土塁を2.8kmにわたって巡らせています。谷部には排水のための石垣で築かれた水門があり、出入口として4つの門があります。内部には建物や倉庫群・水場・のろし台、鍛冶工房などがあったと考えられています。

鬼ノ城の歴史は謎だらけ

「鬼ノ城」の歴史は謎だらけ。というのも「日本書紀」などの歴史書に記録が残っていないためです。しかし、最近の発掘調査成果から、7世紀後半に造られた可能性が高くなっています。663年に朝鮮の白村江で大敗した大和朝廷が唐・新羅の連合軍が攻めてくることをおそれ、防御のために九州北部や瀬戸内沿岸に山城が造られましたが、「鬼ノ城」もその一つではないかと考えられています。国家的事業として築かれた城だったのです。

探索スタート

それでは「鬼ノ城」探索に出発です。車で行けるのはビジターセンターの隣にある駐車場まで。ここからは歩いて回ります。城内には遊歩道が整備されていますが、スニーカーなどの歩きやすいものを履いて行きましょう(トレッキングポールがあると尚良し)。

鬼城山ビジターセンター

鬼城山ビジターセンターは「鬼城山」のことをわかりやすく、映像やパネル・模型を使って紹介しているガイダンス施設です。先にここで「鬼ノ城」の予備知識をつけて回るとより楽しく探索できるのでおすすめです。100名城スタンプはここで押せます(休館日は総社市埋蔵文化財学習の館で押すことができます。※開館時のみ)。また、城内にお手洗いはありませんので、こちらで済ませてから出発しましょう。

【鬼城山ビジターセンター】
所在地:岡山県総社市黒尾1101-2
TEL:0866-99-8566
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日 ※月曜日が祝日の場合は直後の平日、年末年始(12月29日~1月3日)
駐車場:約70台

絶景が広がる学習広場(展望デッキ)

ビジターセンターより途中の分岐を右側の緩やかな道を進むと、約5分で学習広場に着きます。「鬼ノ城」は古代の城としては日本で唯一、城門や板塀・土塁・石垣などの防御施設が復元されており、当時のお城の様子を今見ることの出きる場所です。ただ想像で復元されたものではなく、発掘調査に基づき出来る限りの考証を重ね、可能な限り忠実に復元されています。正面には吉備平野を一望できる絶景が待っています。

復元された西門

西門は間口12mの城内でも最大規模の城門で、発掘調査により残存状態が良かったため復元されました。 威圧感で訪れる人を圧倒しています。 ここからの景色は特に夕焼けや朝日が美しい絶景スポットです。西門まではビジターセンターからバリアフリー化された遊歩道があり、車椅子の方も来ることができる唯一の古代山城です。

復元された版築土塁

西門をくぐり抜けると復元された城壁が良く見えます。「鬼ノ城」の土塁は“版築土塁”と呼ばれるもので出来ています。ただ単に土を盛るだけでなく、少量の土を盛ってそれを足や道具を使い突き固めて、その上にまた土を少量盛り、また付き固め、それを繰り返して高さを出して行ったもので、とても強固な土塁です。この版築土塁が延々と城を巡っていたのです。西門付近にはこの版築土塁が昔ながらの工法で復元されています。垂直近く立ち上る土塁を見上げると、とても迫力があります。

「鬼の城」だけに見られる敷石遺構

版築土塁の城内側・城外側それぞれに石畳がみられます。この敷石遺構は古代山城としては唯一のもので、日本で初めて発見されたもので、他のお城には見られないものです。敷石の上を歩く時はつまづきやすいので気をつけましょう。

城内に6つある水門

版築土塁に沿って下っていくと、木製階段の手前に最初の水門・第0水門があります。「鬼ノ城」では雨水などが城内に溜まらないよう、排水機能を持つ水門が谷部に6つ設置されています。基本的な構造は、下半分は石垣、上半分は版築盛土で造られています。続いて木製階段を登って更に東へ向かいます。遊歩道を東へ10分も歩くと第1水門、その少し先の第2水門(上の写真)に着きます。第2水門は残存状態が良く、「鬼ノ城」の水門の構造を唯一良く観察することができます。

南面の美しい景色を見ながら南門跡へ

第2水門から南門跡までは約10分。この道のり途中の南側の景色は、岡山市街地などが望めて最高にきれいです。南門は西門と同じ規模と規格の大きな門で、柱跡などが良くわかるように整備されています。

絶景を横目に見ながら東側を探索

南門からさらに東側を道なりに進みます。第3水門と第4水門の途中にある突出部からは「鬼ノ城」のもうひとつの絶景、屏風折れ石垣が見えてきます。眼下に広がる景色も最高!

迫力の1枚岩が侵入を阻む東門

東門は西門・南門よりも小規模ですが、城外側から門を入ると城門の両脇には扇状に開く石垣があり、正面には大きな自然の岩が入城を阻むかのように横たわっています。この門は「鬼の城」で一番最初に発掘調査された城門で、以前は第一城門跡と呼ばれていました。 ここから屏風折れ石垣まではアッブダウンが続く少し険しい道のりになります。お弁当ポイントまでもうひと頑張り!

屏風折れ石垣でお弁当タイム

屏風折れ石垣は高石垣を伴う突出部となっていて、眺望がとても良い場所です。鬼ノ城跡の石碑も建っています。行程的には半分を過ぎたあたり。絶景を見ながらのお弁当は格別に美味しかったです!

緑の中を北門まで歩く

屏風折れ石垣からは、比較的なだらかな歩きやすい道が続きます。途中、土塁跡などを見ながら15分ほどで北門に到着。北門も発掘調査後に整備されています。門通路の真ん中を通る排水溝があり、「鬼ノ城」唯一の珍しい構造です。

城内中心部にあった倉庫と管理棟跡

北門から先に進んでいくと左に下る道があります。これを行くとすぐに右側にある礎石建物群に着きます。ここには管理棟と倉庫跡の礎石が発掘後に整備されています。さらに少し下ったところには食料を保管したと思われる倉庫群が発掘整備されています。余談になりますが、20年近く前、この礎石建物群の発掘調査の現地説明会に行ったとき、出土直後の礎石にはクッキリとその上に載っていた丸い柱の輪郭が残っていて(現在は見られません)、古代ロマンを感じたことを思い出しました。さて、ここからUターンしてゴールの角楼跡に向かいます。

ゴールの角楼に到着!

角楼に到着。これで「鬼ノ城」一周完了です。すぐ横がスタート地点の西門です。この角楼も「鬼ノ城」にしか例のない珍しい防御施設です。トップの画像は角楼の上から撮ったものです。今回は「鬼ノ城」の見どころ全部を時間をかけてゆっくりと回り、途中でお弁当も楽しんだりして約3時間で一周しました。慣れたハイカーの方は約70分で回るそうです。

広大な城内の維持管理も大変

今回取材中、ちょうど西門の東側の城壁の補修工事が行われていたので特別に覗かせていただきました。復元された部分の維持管理も大変です。長い年月の風雨などで劣化して土塁などが傷んでくるのは、当時も今も同じ。その都度補修工事を行い、景観と訪れる方々の安全を確保するため、総社市・岡山県・国の関係機関と地元業者が協議協力して維持管理を行っているそうです。
補修工事が終わった後に行ってみると、土が幾層にも積み重なったきれいな版築土塁が完成していました。業者の方にお話しをお聞きしてみると、「今回の補修箇所は幅が7mほどでしたが、築城時にはこの土塁をぐるりと2.8kmも築いたなんて考えられない」とおっしゃっていました。そんなことも考えながら整備された土塁などを見てみると、「鬼ノ城」の壮大さが伝わってきますね。

おしまいに

今回は眼下に広がる古代吉備の国の壮大な景色を望めるハイキングコースとしても大人気の「鬼ノ城」城内を、史跡としても楽しみながらくまなくまわってみました。唯一復元された西門周辺では当時の様子を間近に感じられたり、1300年も前に作られた敷石の上を今歩いているんだ!と考えたり、古代ロマンあふれる楽しい旅でした。あなたもぜひ、桃太郎伝説の地「鬼の城」を訪れてみませんか。
 

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