倉敷美観地区を知りつくした無料ガイドが案内!「DISCOVER WEST ハイキング 地元ガイドとまち歩き」

JR西日本が展開している「DISCOVER WEST」キャンペーンの一環として、岡山県内各地にて無料観光ガイドが案内する「DISCOVER WEST ハイキング 地元ガイドとまち歩き」が開催されています。いずれも事前申し込み不要で、当日の指定時間に現地に行けば無料で参加できるためとても気軽です。

筆者は今回、倉敷美観地区でのまち歩き「倉敷の美と歴史の探訪コース」に参加してきました。倉敷を初めて訪れるかたはもちろん、地元民でも新しい発見が盛りだくさんのまち歩きをレポートします。
掲載日:2025年04月15日
  • ライター:toru.
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倉敷館観光案内所

白壁の町並みの中に建つ、旧倉敷町役場を改装した洋風建築「倉敷館観光案内所」前がまち歩きの集合場所です。

まち歩きは、土・日曜日、祝日の9:30~と13:30~の1日2回(年末年始を除く)実施されています。
参加する際は、集合時間に遅れないようにしましょう。
集合時間になると「倉敷館観光案内所」のこちらの看板の前に、青色のジャケットを着たボランティア観光ガイドのかたが現れます。

中橋

まず最初に案内されたのは、集合場所の目の前にある「中橋」。
ここから見る風景はガイドブックなどによく使われているので、倉敷といえばこの風景をイメージされるかたも多いのではないでしょうか。

ちなみに記念写真を撮る時は橋の手前、欄干(らんかん)付近に立つと、背景の「倉敷考古館」(白壁の土蔵)が綺麗に入ります。

大山日ノ丸証券

倉敷美観地区の古い町並みの中に、「大山日ノ丸証券」という証券会社があります。
こちらの壁にある黒板、どうやら何か書かれているみたいです。
現在の相場の見通しについて、滑らかな文字で丁寧に書かれています。
歴史あるたたずまいの中に最新の経済情勢が書かれているのは、何だか面白いですね。

ちなみに黒板は、毎月一回書き換えられているそうです。

新渓園

「大山日ノ丸証券」の角を左折し、しばらく歩くと右手に「新渓園」の入り口が見えてきます。
「新渓園」は1893年(明治26年)に倉敷紡績を創業した大原家の別荘として作られた日本庭園で、現在は倉敷市に寄贈され、市民行事や各種イベントなどに活用されています。

こちらの日本庭園には、数多くの灯籠(とうろう)や、まっすぐに伸びた松の木など、派手さはないものの多くのこだわりが詰まっています。また、園内にある「敬倹堂(けいけんどう)」は茶会などの各種イベントのほか、一般にも貸し出しされています。

大原美術館

倉敷美観地区の町並みの中で目を引く、パルテノン神殿風の外観が特徴的な「大原美術館」。

現在のクラボウ、クラレの社長を務めた実業家・大原孫三郎により、日本初の本格的西洋美術館として1930(昭和5)年に設立されました。開館の背景には、氏が生涯にわたり援助した洋画家・児島虎次郎の収集した西洋絵画のコレクションを、当時西洋絵画を見る機会の無かった市中の人々に広く公開したいといった思いがありました。
戦後、その思いを受け継いだ孫三郎の長男、大原總一郎は、「美術館は生きて成長してゆくもの」という信念のもと、工芸館、東洋館、分館(現在長期休館中)を整備し、西洋絵画のみならず、民藝や(当時の)現代アートなど、展示の拡充をおこないました。
中庭では毎年6月から10月頃まで、美術館の収蔵作品であるクロード・モネの「睡蓮」ゆかりの花を見ることができます。なんと、フランス・ジヴェルニーのモネの自宅の庭より2000年に株分けされた睡蓮です。
なお、このまち歩きの終点が「大原美術館前」ですので、まち歩き終了後スムーズに入館することができます。

今橋

「大原美術館」の前にかかる重厚な石橋「今橋」。
橋の欄干に彫られた龍のレリーフは、児島虎次郎のデザインによるものです。
内側は線描による平面的なデザイン、外側は彫刻のような立体的なデザインになっているのが特徴的です。

旧大原家住宅(語らい座・大原本邸)

倉敷川をはさんで「大原美術館」の向かいに建っているのが「旧大原家住宅」。
現在のクラボウ、クラレの創業家であり、「大原美術館」を設立した大原家の本宅です。
こちらの建物は江戸時代の倉敷の町家の特徴をよく残していることより、国の重要文化財に指定されています。
また現在は「語らい座・大原本邸」として一般公開されていて、大原家とその足跡を知ることが出来ます。

有隣荘

旧大原家住宅の道を挟んだ隣にある大原家別邸「有隣荘」。緑色の特徴的な瓦の色から別名「緑御殿」とも呼ばれています。
迎賓館として作られたこちらの建物は、和、洋、中の入り交じった折衷様式が特徴的です。

通常は非公開ですが、春と秋に特別公開がありますので、その際にぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
【令和7年春の有隣荘特別公開「有隣荘へようこそ!現代アートでおもてなし」】
開催日時:2025年4月18日(金)~5月11日(日)10:00~16:00(入場は~15:30)※4月21日は休み
詳しくはこちら→https://www.okayama-kanko.jp/event/14833

ひやさい

倉敷美観地区には、入り組んだ狭い路地が各所に張りめぐらされています。倉敷ではこれらの路地は「ひやさい」と呼ばれていて、その語源は差し込む日の光が弱い(浅い)ようす、隣の家の樋(とい)が密接したようすなど諸説あるそうです。
メインの通りから「ひやさい」に一歩足を踏み込んでみると、また違った景色が見えてきます。

倉敷考古館

倉敷美観地区を代表する建物の一つである「倉敷考古館」。1950年に開館した考古学系の資料館で、おもに吉備地方の出土品(土器、石器、はにわなど)を展示しています。
「倉敷考古館」の正面から見たなまこ壁の外観は有名ですが、建物の側面も倉敷らしい写真が撮れる隠れたフォトスポットです。
まち歩き途中に、お気に入りの一枚を撮影してみてくださいね。

倉紡製品原綿積み降ろし場跡

倉敷川のほとりを歩いていると、石のベンチとともに「倉紡製品原綿積み降ろし場跡」と書かれた石碑を見つけました。

ここは、倉敷紡績本社工場(現在の倉敷アイビースクエア)で使う原料(綿)を舟から積み降ろす場所だったのです。道路が未発達だった時代、児島湾の干拓地にて作られた綿花が倉敷川を通ってこちらに運ばれ、紡績工場で糸に加工されていました。
近くにあるセンダンの老木には、船のロープを架けていた跡も残っています。

倉敷アイビースクエア

倉敷美観地区の東側にあるホテルを中心とした複合施設「倉敷アイビースクエア」。
元々は倉敷紡績の本社工場であった赤レンガの工場を、1973年に地元出身の建築家、浦辺鎮太郎氏の設計によりリノベーションされて作られた施設です。

時は高度経済成長、古いものは新しいものに建て替えるのが当たり前だった当時、このようなリノベーションは先駆的でした。
構内には今も代官所の遺構が残っていて、幕府の直轄地・天領として栄えていた頃の時代をうかがい知ることができます。
旧工場の屋根を外してつくられた中庭には、所々に屋根に使われていた瓦が埋め込まれています。

また、機械を置いていた場所には基礎の石がそのまま残されていて、操業当時のようすをうかがい知ることができます。

本町通り

倉敷川沿いから一本北に入ったところにある「本町通り」。
江戸時代に職人の町であった名残りのある、古くからの商店が並ぶ歴史を感じる通りです。
こちらの畳屋さん「森田畳店」も、長年この地で商売をされているうちの一軒です。
倉敷特産の畳縁を使った、お土産に最適なミニ畳を販売されていました。価格もお手頃で、フィギュアを飾ったりするのに人気があるそうです。
こちらは2023年に倉敷えびす通り商店街から移転してきた洋菓子店「はれもけも」。
さまざまな表情が描かれた人気の「しあわせプリン」をお土産に買って帰りました。
それぞれ表情が違うのもおもしろいです。食べる前に、説明書をよく読んでみてくださいね。

井上家住宅

2023年3月より一般公開を開始した「井上家住宅」。
古禄(ころく)と呼ばれる倉敷でも古くから栄えた家で、建物は倉敷美観地区内最古の町屋とされていて、国の重要文化財に指定されています。

児島虎次郎記念館

2025年4月3日にオープンした、大原美術館の新施設「児島虎次郎記念館」。

レトロモダンな外観が特徴的なこちらの建物は、大原美術館本館を手がけた建築家・薬師寺主計(やくしじかずえ)の設計により1922年に竣工。以前は倉敷アイビースクエア内(現在の愛美赤煉瓦館)にありましたが、2016年に閉鎖した中国銀行の倉敷本町出張所を譲り受け、展示内容を拡充して移転リニューアルされました。

館内には「和服を着たベルギーの少女」をはじめとする児島虎次郎の作品、および氏が大原コレクションとともに収集した古代エジプトや西アジアの美術品が展示されています。
※大原美術館の入館券で入館可能です。

音楽図書室(倉敷公民館)

児島虎次郎記念館の向かいにある「倉敷公民館」。
倉敷アイビースクエアを手がけた建築家、浦辺鎮太郎氏の設計により1969年に開館しました。
こちらの3階に「音楽図書室」があります。どうやら普通の図書室とは一風変わったこちらの施設、一体どんな施設なのでしょう。館内の説明には、以下のように書かれていました。

故 大原總一郎氏が生前に愛用していた蓄音機と「大原コレクション」のSPレコードを中核に1969年(昭和44年)に創設された音楽図書室です。
クラシック音楽を主体に、ジャズ・ポップス・オペラ等の幅広いジャンルの音源があり、SPレコード・CD・LD・DVDのほか、音楽図書・楽譜を収蔵しています。
倉敷のまちと音楽を愛した実業家、大原總一郎氏からの寄付によって作られた音楽図書室では、視聴ブースで好きな曲をかけてもらうことができます。スマホやサブスクで音楽を手軽に楽しめる昨今、レコードで聴けるなんて贅沢な体験です。どなたでも利用でき、観光の休憩にも最適な場所ですので、気軽に立ち寄ってみてくださいね。

おわりに

ガイドさんの案内でまち歩きをすると、地元民でも知らないところや、近年できた新しいスポットを知ることが出来ました。

倉敷美観地区周辺の主要スポットを効率よく見て回れますので、はじめて倉敷に来られるかたはもちろんのこと、倉敷の歴史を改めて知りたい地元の人やリピーターにもおすすめです。ぜひ気軽に参加してみてくださいね。

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