ジブリのモデルになった!? 湯原温泉の創業330年以上の宿「元禄旅籠油屋」

真庭市の湯原温泉にある「元禄旅籠油屋(げんろくはたごあぶらや)」は、『千と千尋の神隠し』のモデルになったと言われている宿です。330年以上続く老舗旅館ですが、2024年6月30日にレストランをリニューアル。東京の高級レストランで約8年修行されたシェフが腕を振るいます。今回はレストランと宿泊どちらも楽しめる“オーベルジュ”として、新しい価値を提供する「油屋」の魅力をたっぷりご紹介します。2024年9月1日まで、岡山県立美術館『鈴木敏夫とジブリ展』(岡山展)が開催中で、ジブリで盛り上がっている岡山。その世界観を感じられる宿もぜひ訪ねてみてください。
掲載日:2024年07月12日
  • ライター:髙田美津子
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湯原温泉ってどんなところ?

山陽自動車道岡山ICから車で約1時間。岡山県北部・真庭市に位置している温泉地です。湯原IC手前の長いトンネルを抜け、インターチェンジを降りるとすぐ湯原温泉郷。緑に囲まれ、旭川の清流のおかげで、夏でも比較的涼しく避暑地として人気があります。全国露天風呂番付の「西の横綱」にランクされている露天風呂「砂湯」は、川底から湧き出た源泉をそのまま楽しめる珍しい温泉で、24時間無料で入浴できます。川の流れる音を聞き、ダムの壮大な景観を見ながら入る露天風呂は最高です。(混浴ですが、女性には湯浴み着のレンタルがあります)
初めて湯原温泉に訪れたときは、ジブリに関係ある場所とは知りませんでしたが、この橋を見たとき「ピコーン!」とジブリ好きの私のセンサーが発動しました。『千と千尋の神隠し』のハクと千尋が出会う場所、ハクが千尋のために時間を稼いだシーンが一瞬にして思い出されます。もちろんこの橋を渡るときは、(人間だとばれてはいけないので)息をとめて通りました。

写真の赤い提灯は、湯原温泉の観光関係の方々が台湾への視察に行かれた時に、九份の関係者から友好のしるしとして贈られたものだそうです。興奮を抑えきれませんが、『千と千尋の神隠し』の世界がここにありました!この赤い橋を渡った先が「元禄旅籠油屋」です。

宿の創業は330年以上前の江戸時代

「油屋」は江戸時代の元禄元年(1688)に開業しました。創業336年!? 岡山県内でも老舗中の老舗旅館です。現在の代表取締役の高橋さんは15代目。湯原温泉は山陰までの街道筋にあるため、旅の立ち寄り場として旅人に灯りの油を提供していたそうです。
宿泊専用棟「夢酔庵」とお食事入浴施設「食湯館」があります。こちらは「食湯館」のエントランスです。明治時代の木造の建物を今も大切に使っています。
『千と千尋の神隠し』の映画が公開される前に、スケッチに来られていたという話もあるのだとか。腐れ神が油屋の暖簾をくぐった場面、番台で薬湯の札をしぶられている場面など、想像力を掻き立てられます。
湯原温泉は岡山城を築いた宇喜多秀家の母、お福の出身地が近く、湯原温泉に湯治に来ていたという話も残っているなど歴史を感じられます。元禄時代から330年以上、「油屋」で受け継がれてきた書には、当時の入浴ルールが書かれていました。

本格イタリアン・フランス料理が楽しめる

2024年6月30日にリニューアルしたレストランでは、ランチは本格イタリアンを、ディナーではフレンチのフルコースを提供しています。シェフは、東京四ツ谷「オテルドミクニ」などで修行された実力派です。レストランがある食湯館は明治の建物。和の空間の中で、洗練された美しいお料理を楽しめます。ランチは子連れOKなので、私たち夫婦も久しぶりに贅沢な時間を楽しみました。
できるだけ地元食材を使ったお食事が提供されています。サラダは、粒マスタードとオリーブオイル、白ワインヴィネガーのドレッシング。エディブルフラワーやラディッシュで彩り華やかです。
ランチメニューは、サラダ・パスタ・デザート・ドリンクのコース(2,000円/税込)と、それにメインのお肉がついたコース(2,800円/税込)が用意されています。パスタは3種類から選べ、私は「パンチェッタを使った濃厚カルボナーラ」をいただきました。シェフこだわりの器が、お料理をより美しく、より美味しく引き立ててくれています。
夫は「タコとオリーブのさっぱりトマトソース」をセレクト。ランチのパスタは、旬によって使う食材を変更し、季節を感じられるように工夫されています。ドリンクは、スパークリングワイン、オーガニックワインやソフトドリンクから選べるので、日帰りの方も宿泊の方も楽しめるラインナップです。フルボトルのワインは、シェフの知り合いのソムリエが厳選。その時の気分に合うワインが見つかると思います。
写真はメインの「ハラミのステーキバルサミコ酢のソース」。
湯原温泉で本格的なイタリアン・フレンチがいただけるのは、「油屋」だけではないでしょうか。これまでは宿泊が主でしたが、リニューアル後は泊まれるレストラン「オーベルジュ」として、食事も宿泊も楽しめるようになりました。ランチのみ、ディナーのみの利用もできるので、美味しいお料理を目的に訪ねてみてはいかがでしょう?

【レストラン】
営業時間:月~水曜日、金~日曜日、祝日、祝前日11:30~15:00 (料理L.O. 14:00、ドリンクL.O. 14:30)/18:00~22:00 (料理L.O. 20:00、ドリンクL.O. 21:30)
定休日:木曜日
子どもイス:あり
※デイナーは中学生以上から利用可

源泉すぐそばの露天風呂!新鮮な湯でつるすべ肌

湯原温泉の源泉は、主に砂湯露天風呂、湯本温泉館地下、「油屋」の夢酔庵地下です。「油屋」では、鮮度抜群の温泉を楽しむことができます。写真は女湯の露天風呂「はなゑみの湯」。豊かな湯原の自然を感じられる露天風呂です。7月上旬の11:30ごろに撮影しましたが、この時間は屋根で日陰ができるので、日焼けの心配もありませんでした。

男湯

男湯は、脱衣所から階段を下りると内湯「ろうろうの湯」と打たせ湯があります。さらに下に続く階段を進むと、半露天風呂「いそうれの湯」があります。簾の奥は山。湯の流れる音に包まれ、とっても癒されます。湯原の湯は、無色透明で無味無臭、低張性アルカリ性高温泉(アルカリ性単純温泉)。pH9以上で石鹸なしでもぬるぬるとした触感が特徴です。

貸切家族風呂

宿泊専用棟夢酔庵の地下にある貸切家族風呂「薬王湯」は、源泉かけ流し。夏場は加水、加温せずに湧き出たばかりの湯をそのまま使っています。源泉は44.8度。源泉から近い大きい湯船はやや温度が高いので、しっかり温まりたい方におすすめです。1歳2ヵ月のベビーは手前の湯船にちゃぽん。温まったら足だけつけて足湯を楽しんでいました。
浴場内の源泉が湧き出る場所に、薬師如来がお祀りされています。薬師如来は温泉の神様であると教えていただきました。本日のお礼を伝えて、家族時間を楽しみました。

日帰り入浴情報

【日帰り入浴】
利用時間:11:00~15:00
大人:1,100円 小学生まで:550円

【貸切家族風呂】
利用時間:13:00~18:00
宿泊利用:3,300円(50分)
日帰り利用:5,500円(50分)

全室温泉付きの客室

和のお部屋からは湯原の四季折々の美しい景色を見ることができます。お部屋のお風呂は、地下から湧き出る新鮮な湯を供給しているので、いつでも好きな時に温泉に入ることができます。湯原の温泉と自然に癒される贅沢なひとときです。
お部屋からの眺めです。川の透明度が高く、魚が泳いでいるのが見えます。フライフィッシングでも人気がある場所で、遊漁券を購入すると誰でも釣りを楽しむことができます。自然に癒される、フライフィッシングを楽しむ、温泉で日々の疲れをとる、美味しいお食事をいただくなど、目的に合わせて滞在できるのも「油屋」の魅力です。

お湯の神様をお祀りする薬師堂

「油屋」の隣には、薬師如来をお祀りする薬師堂があります。参拝前に手や口を清める手水はなんと温泉です。「薬湯」は『千と千尋の神隠し』でもよく出てくるワードですね。日々の疲れや穢れを落とす温泉の力を感じられるような気がします。

まとめ

ジブリ作品のモデルになった場所のひとつということで、今回取材をさせていただきましたが、330年以上続く「油屋」の魅力をたくさん感じることができました。特に、スタッフの方のフレンドリーで親切な接客が印象的でした。入浴後にロビーを冷やして待っていてくださり、「外はまだ暑いので涼んでいってください」と声をかけてくださるなど、おもてなしに感動しました。長く愛される老舗旅館「油屋」で素敵な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

【元禄旅籠油屋】
所在地:岡山県真庭市湯原温泉27
TEL:0867-62-2006
駐車場:あり(4台)
※湯原温泉の無料駐車場あり
ベビーカー:エントランスで預かってもらえます
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