倉敷美観地区「令和5年度 秋の夜の有隣荘特別公開 一期一景」でノスタルジックな大人時間

倉敷美観地区のシンボル、「大原美術館」の創設者として知られる実業家大原孫三郎が、病弱な妻・壽恵子を気遣い建設されたのが有隣荘です。大原美術館の所有になって以降、迎賓館としての役割を担い、昭和天皇をはじめ多くの貴賓をお迎えしました。一般には長らく非公開でしたが、平成9年より年に2回特別公開されています。「令和5年度 秋の夜の有隣荘特別公開 一期一景」では、有隣荘からの夕景と共に、大原總一郎が所有していたSPレコードを聴きながら、ドリンクと共にノスタルジックな時間を楽しめる内容となっています。
掲載日:2023年09月06日
  • ライター:高杉郁子
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有隣荘(ゆうりんそう)

大原孫三郎が、「家族のための落ち着いた住まいを」と建設した有隣荘は、大原美術館本館の5倍の費用がかかったと言われていて、大原孫三郎のこだわりが建物の随所にみられます。大原美術館の前の川を挟んだ向かいに位置します。
庭の松は、下の枝を落とすことでまっすぐに伸びて、珍しい瓦の色と映えています。

有隣荘の中へ

入り口で入場料を払い、スリッパに履き替えて入ると、最初にダイニングルームに案内されます。
ここでウエルカムドリンクを選びます。アルコールのオーガニック白ワインか、domaine tettaの岡山県産葡萄ジュースのどちらかで、私は葡萄ジュースにしました。

薬師寺主計(やくしじかずえ)が設計

実業家の大原孫三郎は、奨学金制度で人を育てることもしていて、そのうちの一人、薬師寺主計(やくしじかずえ)は、ヨーロッパで近代建築を学び、有隣荘を設計しました。アールデコを感じるデザインが随所に見られます。ウェルカムドリンクは、この洋間でのみ頂けます。

SPレコードで聞く音楽

大原總一郎の所有していたSPレコードプレーヤーは、ピクニック用で、カバンを広げて、ねじを巻いて音が出るので、ねじが緩むとどこか懐かしい緩んだ音になります。それもまた風情がありました。

息子、總一郎も愛した美術と音楽

大原孫三郎の息子、總一郎は音楽と美術を好んだそうです。シューマンとゴッホが好きだったようで、偶然にもシューマンとゴッホの命日と、總一郎の誕生日は同じだそうです。大原美術館の2年前に作られた有隣荘は、当時は本物のモネの『睡蓮』が飾られてありました(現在は大原美術館本館にあります)。レプリカのモネの『睡蓮』を眺めながら、岡山県産葡萄ジュースを頂きながら、SPレコードプレーヤーから流れてくる「詩人の恋」を鑑賞しました。外はそろそろ夕暮れになってきていました。

2階の和室からの美観地区の夕景美

2階の和室から眺める美観地区の夕景もきれいでした。
オレンジ色の日差しが大原美術館に照り返し、秋の情景でした。
2階にいてもSPレコードの音楽が聞こえてくるので、大人のノスタルジックな時間を楽しめます。2階から見える川にかかる橋は、内装デザインを手がけた児島虎次郎が、辰年の大原孫三郎にちなんで、竜に見立てたデザインにしているそうです。

特別な解説付き

今回のイベント限定の18時・19時の各回15分行われる、解説員さんの特別な解説はおすすめです!
1階の和室からは、日が沈むにつれて浮かび上がってくる庭園のキャンドルの灯りが幻想的できれいです。和室の柱は台湾檜、天井は屋久杉で、今や手に入らない貴重なものとなっています。

作庭は7代目小川治兵衛(おがわじへい)

庭のデザインは、7代目小川治兵衛(おがわじへい)が手掛け、大原孫三郎好みの質実剛健を感じさせるデザインになっています。日が暮れ始め、キャンドルが浮かび上がってきました。

階段のキャンドルも

日差しからキャンドルの灯りへと変わると、また違った有隣荘を味わえますので、日暮れ前からの入館がおすすめです。階段もキャンドルで幻想的です。

大原美術館のライトアップ

日が暮れて、縁側からの大原美術館のライトアップの眺めもきれいでした。大原孫三郎や奥様、息子さんが眺めたであろう風景を自分に重ねてみました。

一期一景

有隣荘から眺める、今しかないこの時間を、SPレコードプレーヤーの音楽に耳を傾け、目の前の景色を楽しむ、まさに「一期一景」。作れそうでなかなか作れない貴重な時間を楽しむことができました。

【有隣荘】
所在地:倉敷市中央1丁目3-18
TEL:086-422-0005(大原美術館)

「令和5年度 秋の夜の有隣荘特別公開 一期一景」開催日
2023年9月2日(土)、 3日(日)、 9日(土)、10日(日)、16日(土)、17日(日)、23日(土)、24日(日)
開場時間:17:30~20:00(19:30入場締切)
料金:2,500円(有隣荘入場料、ウェルカムドリンク付)
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