烏城紬

うじょうつむぎ
唯一無二のの糸の紡ぎ方でやわらかであたたかな織物に

岡山の象徴ともいえる岡山城は、漆黒の佇まいから烏城とも呼ばれる名城。その名を冠した烏城紬は、200年以上受け継がれる織物です。かつては行程ごとに分業で作られていましたが、昭和の中頃から糸紡ぎや染色、整経、機ごしらえ、織りなど、すべての行程を一人で行うようになり、他の紬の産地とは異なる製織法へと変化していきました。
最大の特徴は、柔らかくしなやかな手触り、軽くてあたたかい着心地の良さ。これを生み出しているのが、糸に撚りをかけない緯糸の紡ぎ方です。やさしく束ねた数本の生糸に、独自改良を加えた紡ぎ機でコイル状に巻き付けることで、空気を含んだようなふわっとした緯糸に。あえて本数を少なくした経糸と重ねていき、唯一無二の感触が紡がれていくのです。縞模様を基本とした柄も烏城紬の魅力のひとつで、草木染めの色糸が織り成す素朴で優しい風合いは、着物通からも一目置かれています。
最近では、巾着やテーブルセンター、ペンケースなど現代の暮らしに寄り添う用品も作られ、広く親しまれています。

県指定郷土伝統的工芸品:昭和63年4月