高越(たかこし)城址顕彰会

井原市荏原(えばら)地区(神代町、東江原町)は、旧山陽道沿いに位置し、近隣に山城跡が点在するエリアです。その中の一つ高越城址は、戦国大名の魁と名高い北条早雲が生を受け、青年時代まで過ごした場所といわれており、近年歴史ファンの間で注目を集めているスポットです。高越城址顕彰会は、そんな井原を代表する山城跡とその歴史を後世に語り継ぎたいという気持ちから、昭和44年(1969年)発足。同地区の有志が集まり、山城跡のある高越城址公園周辺の維持管理をはじめ、同城址に関連するイベント運用や歴史講演会の企画など顕彰活動に尽力。近年では、旅行ツアーの造成にも積極的に協力し、井原市の観光振興に大いに貢献しています。

戦国時代のロマンを伝える山城跡の公園を維持管理

  • 高越山の頂上にのこる高越城址

    高越山の頂上にのこる高越城址

  • 頂上付近の案内看板

    頂上付近の案内看板

  • 高越城址公園入口

    高越城址公園入口

  • 公園トイレ

    公園トイレ

  • 高越城址顕彰会 会長の谷川さん

    高越城址顕彰会 会長の谷川さん

高越城の歴史は古く、鎌倉時代末、蒙古襲来に備えて作られたのが最初といわれています。その後、戦国時代に備中伊勢氏が荏原地域を治め、この城を居城としました。北条早雲は、若い頃の名を伊勢新九郎盛時といい、備中伊勢氏の城主・伊勢盛定の子として生まれ、青年時代までこの地で過ごしたという説が近年有力視されています。
「高越城址は、本丸を含め5段の郭で構成された山城で、当時の状況をよくとどめています」。そう話すのは、高越城址顕彰会・4代目会長の谷川功さんです。当初は山城跡しかなく、道も整備されていませんでしたが、顕彰会の発足から数年後、井原市が高越城址公園整備事業をスタート。本丸のある頂上付近から、お手洗い、駐車場、多目的広場と段階的に整備が進んでいき、平成12年(2000年)に完成しました。「駐車場が山頂近くに整備されており、そこまで車で登れます。本丸までは徒歩5分ほどです」と谷川さん。山城といえば険しい山道をひたすら登るイメージがありますが、同城址は車で登れるお手軽さも魅力といえます。

定期的な清掃と草刈りを実施

  • 定期的に清掃を実施

    定期的に清掃を実施

  • 草刈りの様子

    草刈りの様子

  • 大岩刻

    大岩刻

  • 登りやすいよう手すりを設置

    登りやすいよう手すりを設置

貴重な歴史を後世に伝え、整備された公園をきれいに保つため、同会は井原市から高越城址公園の管理を受託されています。具体的には週1回、公園内の巡視とトイレ清掃等を行い、「北条早雲まつり」開催直前の3月を含め年3回、草刈りを実施します。北条早雲ゆかりのスポット・大岩刻(だいがんこく)も令和5年より同会が管理。周辺の清掃のほか、山道に手すりを設置するなど、きめ細かなおもてなしを実践しています。「きれいですね、のぼりやすいですねと言われると、やはり嬉しいですし力になります」と谷川さんは胸を張ります。

講演会とイベントによる顕彰活動

  • 年1回、歴史講演会を実施

    年1回、歴史講演会を実施

  • 北条早雲まつり

    北条早雲まつり

  • 「初日の出を見る会」早雲太鼓の様子

    「初日の出を見る会」早雲太鼓の様子

同会では高越城址とその歴史を顕彰するための活動も行っています。その一つである歴史講演会は約35年前にスタート。大学教授や専門講師を招き、1年に1回開催しています。また、高越城址を会場として、元日に「初日の出を見る会」、4月に「北条早雲まつり」を開催。「北条早雲まつり」は令和6年で35回目を数え、伝統芸能のほか岡山戦国武将隊の演舞など、地元の人々はもちろん戦国ファンも集まる人気のイベントに成長しています。一方、「初日の出を見る会」は勇壮な早雲太鼓の演奏を背景に、早雲を偲びつつ初日の出を眺める催しで、それぞれ高越城址の知名度アップに貢献しており、令和5年(2023年)の城址見学者は令和元年(2019年)と比較して約2倍に増えました。

次世代へ郷土の歴史を伝える

  • 北条早雲関連の冊子等を制作

    北条早雲関連の冊子等を制作

  • 井原中学校の郷土学習に協力

    井原中学校の郷土学習に協力

  • 城址の頂上に北条五代の幟を設置

    城址の頂上に北条五代の幟を設置

  • 「早雲の里 荏原駅」北側広場

    「早雲の里 荏原駅」北側広場

また、地域の子どもたちへ高越城址の歴史を伝えるために、荏原地区のまちづくり協議会による北条早雲のリーフレットや絵本、かるた、日めくりカレンダー等の制作に協力するほか、「北条早雲まつり」で子どもたちが武者行列に参加する際のサポートなどを行っています。令和5年(2023年)には、地元の井原中学校の要請で郷土学習を受け入れ、高越城址での現地案内および質疑応答、さらに山頂で北条五代の幟設置式も行いました。北条五代の幟は井原鉄道「早雲の里 荏原駅」の北側広場にも設置されており、同広場にある北条早雲像と共に、観光客のフォトスポットになっています。

山城ツアーなどの観光誘客にも協力

  • 「山城ガールむつみ」さんのツアー

    「山城ガールむつみ」さんのツアー

  • 散策コースや登山道を整備

    散策コースや登山道を整備

  • 案内看板をリニューアル

    案内看板をリニューアル

  • 戦国列車(井原鉄道)

    戦国列車(井原鉄道)

  • 戦国列車内には北条早雲のデザイン

    戦国列車内には北条早雲のデザイン

  • 高越城址顕彰会の皆さん

    高越城址顕彰会の皆さん

近年、歴史ファンを中心に山城人気が上昇。同会ではその波にのって県外からの観光誘客にも協力しています。2023年(令和5年)3月、山城の魅力を全国に伝える「山城ガールむつみ」さんのウォーキングツアーが高越城址と北条早雲関連スポットを舞台に実現。同会は井原市観光協会と連携し、その造成に全面的に協力しました。高越城址公園の散策コースや登山道の整備をはじめ、案内看板のリニューアル等も実施。その結果、同ツアーは全国から多数の参加者が訪れ、大成功をおさめました。同年10月には地元の井原鉄道と沿線地域市町の共同企画による、「戦国列車」がリリース。北条早雲がヘッドマークに採用された列車車内には同顕彰会も紹介されました。これは同会のこれまでの活動が実を結んだ一つの成果といえそうです。谷川会長は「年々高齢化が進み、会員数も減少していますが、むつみさんのツアーや戦国列車などで地域が盛り上がるのはありがたいこと。これからもがんばりたい」と語りました。井原を代表する山城である高越城址。北条早雲が生きた当時の歴史を伝える場所として今後も注目したいスポットです。

高越城址顕彰会(城組アワード2023紹介ムービーより)

高越城址顕彰会が、城の保存・継承活動を応援するプロジェクト「城組アワード」で、2023年に表彰された時の動画です。