domaine tetta/高橋竜太(たかはしりゅうた)さん
岡山県北西部に位置する新見市哲多町(にいみしてったちょう)のワイナリー「domaine tetta」の創業者・高橋竜太さん。2009年に異業種である建設業から農業へ参入。地元のぶどうを使ったワインの製造・販売を目指して、耕作放棄地となっていた8ヘクタールのぶどう畑の再生に着手しました。2016年には畑の傍にワイナリーをオープン。創業当初は外部に委託していたワインの醸造を自社で開始し、6次産業化を実現しました。現在、ぶどう栽培から醸造、熟成、瓶詰めまですべてを行うdomaine(ドメーヌ)という形態でワイン作りを行っています。
耕作放棄地の再生からはじまった
もともと生食用のぶどうが栽培されていた耕作放棄地の再生を目的にはじまった「domaine tetta」の歴史。高橋さんは「単に畑を再生させるだけでなく、そこでの農業を持続可能なものにするために、ビジネスとしての成功が必要不可欠だった」と語ります。新見市は全国でも珍しい石灰岩質で、この地質がワインに適したぶどう作りに向いているということもあり、最初から念頭にあったのは、栽培したぶどうをワインという商品にして利益化する環境と仕組みの確立。ゆえに、ワイン用のぶどうの苗木の植え付けや農業研修生の受け入れなど、常に先を見据えた取り組みを継続して行ってきました。その結果、年を重ねる毎に人もぶどうも増え、今では従業員数約20名、35~37品種を栽培しています。
旅の目的地になる場所
創業から13年、荒れ果てていた畑は見違えるような景色に変わりました。ここで収穫されたぶどうで作られるワインは毎年20種類前後。フラッグシップ商品の<シャルドネ>をはじめ、ワインとして流通しているのはめずらしい食用のぶどうを使った<安芸クイーン・マセレ>など、新しい商品にも意欲的で毎年新作が生まれています。そんな「domaine tetta」のワインを購入したり料理と一緒に楽しんだりできる場所として、ワイナリーにはカフェも併設。この場所が今、旅の目的地として県内外から注目されています。「地域活性や観光振興が目的ではない」と高橋さんはいいますが、事業としてぶどう作りやワイン作りに真摯に取り組んできた結果が人を惹き付け、多くの来訪客に繋がっているのは間違いありません。
ストーリーのあるものづくり
「ワインは嗜好品なので、たくさんの商品の中から選んでもらうためにはブランディングが必要」と高橋さん。デザインというツールを取り入れているのもそのためだといいます。たとえばワイナリーの建築デザイン。岡山県出身のインテリアデザイナー・Wonderwall®︎片山正通さんが手掛けた建物は、ぶどう畑が一望できる場所に建つスタイリッシュな佇まい。カフェ店内からガラス越しに見える醸造所の壁にはネオンサインの現代アートも展示されていて、まるでギャラリーのようです。また、ワインのエチケット(ラベル)はグラフィックデザイナー・平林奈緒美さんによるもの。個性的で目を惹くイラストは、なぜこの絵柄になったのか見る人に興味を抱かせます。商品や場所が持つストーリーをデザインという形で見せることも、高橋さんが考えるブランディングのひとつなのです。
持続可能な事業としてチャレンジを続ける
これからの目標について尋ねると、「ワイン作りは1年のサイクル。50年あっても50回しか作れない。そう考えると1年1年が勝負です」と高橋さん。未来を見つめながら、今できることに向き合ったものづくりを続けることを力強く語ってくれました。「domaine tetta」のワインは、今や日本国内だけでなく海外でも流通しています。岡山・新見で作られたワインが多くの人から注目され、それをきっかけに生産地を訪れる人が増える、ワインツーリズムという形の新たな“価値”を生み出す「domaine tetta」の今後に期待が膨らみます。「まだまだ成長の過程です。この先もここでぶどうを、ワインを作り続ける環境を維持していくことが目標。一年一年事業性を持ってチャレンジしていきます」。高橋さんの思いは、創業時から変わらずシンプルで真っ直ぐです。
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