練尾賢治(ねりおけんじ)さん
岡山県指定重要無形民俗文化財(※)「宮内踊り」の保存振興に、20年以上にわたり取り組んでいる練尾賢治さん。吉備津神社にほど近い吉備津地区で生まれ育った練尾さんは、現在宮内踊り保存会副会長として活動。また、高松観光協会副会長、高松地区環境衛生協議会副会長、鯉山(りざん)学区連合町内会長、西町町内会長、鯉山学区安心安全ネットワーク会長、鯉山地区パトロール隊隊長、県青少年相談員、岡山西商工会総代、吉備津神社総代など様々な役職を兼任し、その活動の中で得た豊富な情報を地域のコミュニケーションや観光発展にも活かしています。
※衣食住・信仰・年中行事等に関する風俗習慣・民俗芸能、民族技術の中で重要なものとして県が指定(現在34件指定)
※衣食住・信仰・年中行事等に関する風俗習慣・民俗芸能、民族技術の中で重要なものとして県が指定(現在34件指定)
「宮内踊り」とは?
宮内踊りは岡山市の吉備津神社で毎年7月31日の夜に行われる盆踊りです。江戸時代後期の宝暦年間(1750年代)に、神社の門前町である宮内に芝居の興行で訪れた歌舞伎役者・三桝大五郎(みますだいごろう)が振り付けて、地元の芸者衆に躍らせたのが始まりと伝えられています(宮内踊り保存会公式サイトより)。手足を大きく動かして誇張する歌舞伎の代表的な歩き方の表現“六法”をくずして構成された振りは、単純な動作を緩やかな速度で踊るのが特徴。優雅かつ男性的な力強さも感じさせる、特色ある踊りです。
宮内踊り保存会について
吉備津に伝わる文化財「宮内踊り」を後世に保存継承することを目的に、昭和10年(1935年)頃に発足した「宮内踊り保存会」。2022年現在、会員は38名(宮内踊り保存会公式サイトより)。練尾さんはこちらで副会長を務め、中心的な役割を担っています。「地元に残る貴重な文化が廃れないよう、伝え広めることが使命」と、毎月第一土曜日の10時から「鯉山小学校」の体育館で行う定期練習をはじめ、吉備津神社での奉納踊りに向けて指導員を町内会に派遣するなど、地域住民とのコミュニケーションを図りながら保存振興に貢献。また、吉備津地域の出身で茶祖としても知られる、栄西(ようさい)禅師が建てた京都の建仁寺で踊りを披露するなど、地元以外での普及活動にも積極的です。
「宮内踊り」は地元の誇り
「宮内は江戸時代、吉備津神社の門前町として栄えた賑やかな遊興地でした」と話してくれた練尾さん。西日本随一の歓楽街には芸事に関心のある人々が集まり、定期的に上方や江戸から千両役者が訪れて芝居の興行が行われていたといいます。そんな土地柄だからこそ生まれた宮内踊り。発祥の経緯を知ることも地域の歴史や文化に興味を抱くことに繋がります。「宮内踊りは地域が誇る魅力のひとつ。活動を通してそれを若い人たちにも伝えていけたら」と、小学校の運動会や鯉山学区体育協会のプログラムにも取り入れてもらっているそうです。2022年7月31日に行われた「宮内踊り」でも、地域の人や子どもたちが輪に加わり、楽し気に踊る姿が見られました。
後継者を育て後世へ文化を繋ぐ
地域文化の継承は簡単なことではありません。課題はやはり後継者不足。一朝一夕にいかないことではありますが、「学校行事や地元の祭りなどで子どもの頃から接する機会を持っていると、大人になっても夏が来ると自然と踊りや故郷のことを懐かしく思い出してくれるはず。この土地に生まれた人の郷土を愛する気持ちが、地域の活性や観光の振興につながる」と思いを語る練尾さん。近年は興味を持ってくれる人が増えてきたのが実感でき、それが励みにもなっているそうです。「続けることは大変。だけど使命感を持っているとやりがいになる。地元はもちろん、市外県外の方、外国の方、興味のある方なら誰でも参加OKですよ」と、フラットに前向きに、後世へ文化を繋ぐ活動を続けています。